夢みるDAHON

はじめに

 自転車整備に関する資格を持っていない人がカスタムした自転車は、自転車屋さんに修理を引き受けてもらえなくなることがあります。また、カスタムが原因で交通事故を起こしてしまった場合、自転車の整備不良とみなされて、例え自分が悪くなかったとしても責任を問われることになります。自転車のカスタムにあたっては十分にご留意いただくとともに、プロの自転車屋さんにお願いすることをお勧めします。
 なお、ご自信でカスタムした自転車に不具合が生じましても、当工房は一切の責任を負えません。あらかじめご理解ご了承頂きますようお願いいたします。

プロローグ

 MINI LOVE 2015のカスタムバイクコンテストで「DAHON賞」の賞品としていただいた世界に一台しかないDAHON Curve D7、それがカーブ君です。DAHON乗りにとって正に夢のような自転車を手に入れることができたわけですが、カーブ君が我が家にやってきてからしばらくの間、ずっと箱の中に入れられたままでいたのです。それはなぜか。世界に一台のカーブ君をどうしたものかとあれやこれやと思いをめぐらせていたからです。

 このまま永久保存しておくのか?それともカスタムするのか?でも生半可なカスタムは許されない。そんなことを考えているうちにいつの間にやら1年もの月日が流れ去っていたのです。

 そんなある日のこと、カーブ君が押し込められている箱を眺めていたら、なんだか急に可哀想になってきたのです。もしかしたら外を颯爽と走っている夢でも見ているのではないだろうか?

 たとえ世界に一台しかない自転車であったとしても、自転車としてこの世に生まれてきたからには走るのが本分。それにカスタムバイクコンテストでいただいたのですから、カスタムでお返しするのが流儀というものです。

 というわけで思い立ったら善は急げ!世界に1台の自転車に相応しいカスタムをとことん追求していきたいと思います。

Capter.1 カスタムコンセプト

1.1 パフォーマンスコンセプト

 DAHON Curve D7の特徴はなんといっても小さいこと。DAHONの外装式の変速機を搭載したモデルとしては、最もコンパクトなモデルです。

 16インチのホイールでしかもエントリーモデルのDシリーズなのですから、そもそも走りなど語れる自転車ではありませんが、自転車は走りが命です。たとえ16インチであっても走りには徹底的にこだわりたいものです。

 でもだからといって、コンパクトさが売りなのですから、折り畳みサイズを大きくしてしまうようなカスタムは一切したくはありません。 

 

 そこで目指したのは、小ささを感じさせない走り。

 

 コンパクトさを1ミリたりとも損なうことなく、走りだけを磨き上げた最高にホットなDAHON Curve D7にカスタムしていきたいと思います。

DAHON - Curve - D7 - カスタム

1.2 デザインコンセプト

 どんなに走りが素晴らしかったとしても、カッコ悪い自転車では乗る気がしませんし、どんなに高級なパーツをまとわせたとしても、色がガチャガシャだったり、ラインが美しくなかったり、ありきたりだったりだったとしたら、世界に1台しかないカラーリングが施されたCurve D7を台無しにしてしまいます。
 ファッションは個の演出。まとわせるパーツは世界に1台にふさわしい個性溢れるものでなくてはなりません。だから人と被りそうなパーツは避けたいし、かといって悪目立ちさせてもいけません。
ひとつひとつのパーツが強烈な個性を放ちながらも、全体として一体感をもってまとまっている。そんな自転車にカスタムしていくために定めたのが3つの掟です。

 

掟その1 ブランド

 誰でも知っているブランドのパーツは極力避けて、世界に1台の自転車にふさわしい知る人ぞ知る由緒ある名門メーカーのハイグレードなパーツを選ぶこと。

 

掟その2 カラーリング 

 世界に1台のスプラウトグリーンのフレームカラーをより際立たせるために、カラーはブラック、ロゴはホワイトのパーツで統一すること。

 

掟その3 モデリング 

 DAHON Curve D7のフレームにマッチするエッジの効いたシャープな曲線でデザインされたパーツであること。

 

 一切の妥協を許さずに最後までこの三つの掟にこだわりぬいて、最高にクールなDAHON Curve D7にカスタムしていきたいと思います。

Chapter.2 ポジション出し

 DAHONはライディングスタイルに合わせてアクティブライド、スタンダードスタイル、リラックススタイルからなる3つのタイプの自転車をラインアップしています。Curve D7はシティライドを想定したリラックススタイルの自転車です。いわゆるママチャリポジションの自転車ですから、Curve D7を速く走らせようと思ったら、スポーティなフォームで乗れるようにしなければなりません。

 自転車のカスタムというと真っ先に思い浮かぶのが軽量化ですが、まともなフォームで漕げなかったら走りなど語れるわけがありません。フレームがワンサイズしかないDAHON車の場合は、真っ先にポジションを出しから始めなければいけないわけです。

DAHON - カスタム

 ポジション出しをするためには、ライディングフォームを決めるサドルとハンドルとペダルの相対的な位置を割り出さなければいけません。今回は手っ取り早く、ポジションが決まっているロードバイクから写し取ってしまうことにします。写し取るのはクランク、ハンドル、サドルのそれぞれの相対的な位置を表すリーチ、スタック、サドル後退幅、そしてサドル高の4つの長さです。

 リーチは、ボトムブラケットの中心からハンドルの中心までの水平距離です。クランクとハンドルの水平方向の位置関係を表します。

 スタックは、ボトムブラケットの中心からハンドルまでの垂直距離です。クランクとハンドルの垂直方向の位置関係を表します。

 サドル後退幅は、ボトムブラケットの中心からサドルの先端までの距離で、クランクとサドルの水平方向の位置関係を表します。

 サドル高は、ボトムブラケットの中心からサドル中央の座面までの距離で、クランクとサドルの位置関係を表します。


 ロードバイクであるKUOTAのKURAROと、Curve D7のポジションを測って比較してみると、サドルの位置は後退ぎみで、ハンドルが極端に身体に近くなっています。サドルにどっしりと腰を下ろして、脚の重さでペダルを下ろすママチャリポジションの特徴が良く出ていることがわかります。

 スタック、サドル高、サドル後退幅については、それぞれ、ハンドルポスト、シートポスト、サドルの調整範囲内で合わせることができそうです。100mmも差があるリーチについては、伸ばす方法を考えなければいけません。

ポジション(注1 DAHON Curve D7  KUOTA KURARO

リーチ(注2

440

540  -100
 スタック  580-710 625  ±0
 サドル後退幅(注3  225 210  -15
 サドル高(注4 550-700  655 ±0

注1:ライダーの身長は178cm

注2:ボトムブラケットからヘッドチューブではなくハンドルバーまでの距離で比較

注3:ボトムブラケットからサドルの先端ではなくシートポストのヤグラの中央までの距離で比較

注4:ボトムブラケットからサドル中央の座面ではなくシートポストのヤグラの中央までの距離で比較


2.1 リーチを伸ばす秘策とは

 DAHONのフォールディングバイクのリーチを伸ばし方としては、右折れのハンドルポストに交換してポジションチェンジャーでリーチを伸ばす方法、ハンドルバーをブルホーンやドロップハンドルに変えてリーチを伸ばす方法、バータイプのインナーポストに交換してステムを取り付けてリーチを伸ばす方法の3つの方法が知られています。ただ今回はいずれの方法も、折り畳みサイズを大きくしてしまうので、採用することはできません。


 そこで取り出しましたのはternではお馴染みのアンドロスステム。足りないリーチを伸ばしながらも、ご覧のとおりきっちりと折り畳むことができます。アンドロスステムはリーチを9cm伸ばすことができますので、これでロードバイクとほぼ同じポジションで乗れるCurve D7の完成です。

 リーチを伸ばさずにハンドルだけ下げてしまうと、手元が詰まって前のめりになってしまい、上半身の体重を腕で支えなければいけなくなります。腕や肩への負担が大きくなるばかりか、ペダルに体重を乗せられなくなってしまうので、脚への負担も大きくなります。だからCurve D7を楽に速く走らせようと思ったら、リーチを詰めるようなカスタムは絶対に避けなければいけません。
 余談になりますが、一見同じに見えるDAHONのハンドルポストですが、その長さや傾きは様々です。同じモデルであっても年式によって、長さや取り付け角度が異なっています。
自分のリーチにあったハンドルポストを見つけることができれば、ステムなど取り付けることなくカスタムできるかもしれません。その反対に、よく確認せずにハンドルポストを交換すると、意図せずにリーチを詰めてしまうことがあるので注意する必要があります。特にハンドルポストのカラーをシルバーからブラックに変えた方はご注意を!



Chapter.3 ミニベロの走りを決めるパーツとは

 ミニベロ専用に設計されたパーツは、メーカーの純正品を除けばほんの僅かしか流通していません。思い浮ぶのはシマノのカプレオくらいですが、エンド幅が135mmなので使える自転車は限られています。ちなみにCurve D7はエンド幅が130mmなのでカブレオは使えません。

 だからミニベロのカスタムは、ロードバイクやマウンテンバイク用のパーツを流用するしかないわけですが、大方のパーツは賄うことができます。ただひとつだけ注意しなければいけないパーツがあります。ミニベロでは、普通の乗り方をしていてもロードバイクやマウンテンバイクの想定をはるかに超えて酷使されるパーツがあるからです。それはホイールの回転軸、すなわちハブです。

 

  305サイズのホイールに1.5インチのタイヤを履かせたCurve D7のタイヤ周長はおよそ1m20cm、700Cのホイールに23Cのタイヤを履かせたロードバイクのタイヤ周長は2mおよそ30cm。つまりCurve D7のタイヤ周長はロードバイクの半分しかないことになります。


 仮にCurve D7を時速25kmで走らせたとしたら、ロードバイクを時速50Kmで走らせている時と同じ回転数でホイールを回していることになるのです。時速50Kmと言えばプロのアスリートレベルの速さです。だから例えアマチュアであっても、ミニベロを気持ちよく走らせようと思ったら、ハイエンドクラスのスペックが必要になるのです。

 Curve D7のホイールに使えるハブは、リアハブが130mm28Hで、フロントハブは74mm20H。ハブ専門メーカー製で、カラーはブラック、ロゴはホワイトという条件に照らして、リアハブはDT-SWISS 350、ロントハブは選択する余地がなかったのでRIDEAを採用。ちなみにGOKISOのハブも条件に合っていたのですが、やたらと重かったことと、そもそも高価すぎてとても手を出せなかったのでパスしました。


 16インチの場合、ハイエンドのハブで組んだホイールセットを入手することが難しいので、ハブだけに注力してアップグレードすることをお勧めします。中途半端なスペックのハブで組んだホイールにアップグレードしたとしても、すぐに物足りなさを感じるようになるからです。

Chapter.4 乗り心地をデザインする

4.1 突き上げの正体

 ミニベロの乗り心地が悪いと言われるのは、ホイールの径が小さいことに起因しています。なぜホイールの径が小さいと乗り心地が悪くなるのか?それはギャップを短い距離で乗り越えなくてはならないからです。2cmのギャップを乗り越えるために必用な距離を比べてみると、700Cのロードバイクの場合は11cm、406サイズの場合は10cm、305サイズの場合はわずか8.5cmしかありません。つまりロードバイクよりも406サイズの場合でおよそ10%、305サイズの場合は23%もの大きな衝撃を受けることになるわけです。305サイズは406サイズと比べても15%以上の大きな衝撃を受けることになります。この衝撃が後輪からの突き上げとなって、ミニベロの乗り心地を悪くしているのです。